株式会社設立後、税務署に対する手続きで知っておくといいこと

会社の談話室を行きかう社員たち
申請書・届出書添付書類等提出期限
定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書定款の写し適用を受けようとする事業年度終了の日まで
事前確定届出給与に関する届出書付表あり新設時の場合は、設立日以後2か月を経過する日まで
消費税の各種届出書

定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書

適用を受けようとする事業年度終了の日まで

提出部数は通常は1部(自社の控えは別に用意する)ですが、調査課所管法人といって管轄が国税局である、(原則)資本金1億円以上の法人は、2部提出します。

申請により、期末の日から定時株主総会が行われる日までの期間に余裕をもたせることができます。

定款が「定時株主総会は事業年度終了の日の翌日から2か月以内の開催」となっているのに申告期限の延長をしてしまうと、定款違反になってしまいます。
この場合は、定款を「3か月以内の開催」にすると、申告期限の延長ができます。

申告期限を延長した場合でも、法人税は原則的な申告期限の通り会計期間終了の日から2か月以内に、「見込み納付」として納めます。
延長された期限に確定申告書を提出して、差額を納付したり、還付が受けられるようにします。

法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人は、消費税や地方税も、各税ごとに届出をすることにより申告期限の延長ができます。

事前確定届出給与関する届出書

新設時の場合は、設立日以後2か月を経過する日まで

事前確定届出給与は、届出どおりの支給日に届出書類に記載した金額を支払うことにより損金算入が認められる役員報酬で、イメージとしては役員の賞与になります。

役員報酬は、全額を経費(損金)にできる従業員の給与とは異なり、所定の要件を満たさなければ損金として計上することができません。
税法上、損金として認められる役員報酬には、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3種類があります。

定期同額給与の金額を低くして、事前確定届出給与で多額の役員報酬を支給した場合、金額によっては社会保険料を安くできる可能性があります。

消費税の各種届出書

届出書提出期限
適格請求書発行事業者の登録申請書最初の事業年度の終了の日まで
消費税の新設法人に該当する旨の届出書速やかに提出、ただし法人設立届出書に消費税の新設法人に該当する旨を記載した場合は、提出は不要
簡易課税制度選択届出書適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで

原則として、資本金1,000万円未満の新設法人は消費税の免税事業者となり、消費税を納める義務はありません。
インボイス制度が始まりましたが、消費税は特例による選択肢が様々にありますし、ご自身でよく検討して税務署等にご確認のうえ各制度を選択されることをおすすめします。

参考までに:

適格請求書発行事業者の登録申請書

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの経過措置によりインボイス登録する場合

登録申請書を、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出

免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受ける場合は、原則として「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要がありますが、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの属する課税期間にインボイス登録する場合は、経過措置により課税事業者選択届出書の提出は不要です。

会社設立の初日からインボイス登録事業者となるには、適格請求書発行事業者の登録申請書に「事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載します。

経過措置後の登録

課税事業者選択届出書と適格請求書発行事業者の登録申請書を合わせて提出

課税事業者選択届出書を、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出すれば、その事業を開始した課税期間の初日から課税事業者となれます。

会社設立の初日からインボイス登録事業者となるには、一緒に提出する適格請求書発行事業者の登録申請書に「事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載します。

消費税の新設法人に該当する旨の届出書

まず「消費税の新設法人に該当する旨の届出書(第10-(2)号様式)」を提出する必要があります。
しかし、法人設立届出書の「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」の欄に設立年月日を記載しておくと、当該消費税の新設法人の届出書は不要になります。

消費税の新設法人が適格請求書発行事業者の登録申請をするとき

登適格請求書発行事業者の登録申請書を、事業の開始した日の属する課税期間の末日までに提出

(消費税の新設法人(資本金1,000万円以上の法人)は、課税事業者選択届出書は提出しません。)

会社設立の初日からインボイス登録事業者となるには、適格請求書発行事業者の登録申請書に「事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載します。

簡易課税制度選択届出書

新規開業した事業者は、開業した課税期間の末日までにこの届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。
簡易課税を選択した場合、2年間は本則課税に変更できません

簡易課税制度とは

中小事業者の消費税納税事務負担に配慮する観点から設けられた制度です。
提出した事業者は、基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税期間について、この制度を受けられるようになります。

消費税の納税額は、簡単にいうと、売上げに係る消費税額(受取った消費税額)から仕入れに係る消費税額(支払った消費税額)を差引いて求めます。

本則課税は、仕入れに係る消費税額を、実額による仕入高から算出するのに対し、簡易課税は、仕入れに係る消費税額を、売上高に(業種ごとに定められた)みなし仕入率を掛け合せて計算した仕入高から算出します。

本則課税と簡易課税のどちらが納税額において有利かは、業種や事業者ごとに異なり、また同一事業者であっても事業年度により異なります。
(理屈としては、実際の課税仕入率(課税仕入÷課税売上)とみなし仕入率を比較して、みなし仕入れ率が高ければ、簡易課税が有利となります。)

本則課税は、仕入れに関して、区分経理(税率や、税額控除できない仕入れについて)が大変ですが、開業初年度が赤字になりそうであったり(経費が、税額控除できない仕入ればかりな場合は別として)、または高額の設備投資をする事業年度では、仕入れに係る消費税額が還付される可能性はあります。

簡易課税は売上高のみを区分経理し実額で計測すれば仕入高は計算できるので、事務負担は軽くなりますが、赤字決算でも売上げがあれば、基本的に消費税を納めることになります。

インボイス制度導入に伴う2割特例について

課税事業者は本則課税か簡易課税か、いずれかを選んでいるのですが、インボイス登録しなければ免税事業者だった事業者は、令和5年10月1日から令和8年9月30日の属する各課税期間において、消費税申告時の計算(前もって、届出る必要はない)で、普段の課税方法と2割特例を比較して有利なほうを選べます。