配偶者居住権の消滅

消滅事由の種類と課税関係
原則として、配偶者居住権は配偶者の終身の間存続します。また事前に存続期間を定めることも可能です。
配偶者居住権の消滅事由 | 課税関係 | |
1.配偶者が死亡 | 配偶者居住権は消滅し、負担付所有権は完全所有権を回復 | 課税関係なし |
2.存続期間が満了 | 配偶者居住権は消滅し、負担付所有権は完全所有権を回復 | 課税関係なし |
3.建物等が災害等により全部滅失等 | 建物が地震等による滅失 | 課税関係なし |
4.建物の所有者による消滅請求 | 配偶者が用法遵守義務に違反した等 | 贈与税や譲渡税 |
5.配偶者が配偶者居住権を放棄 | 配偶者が施設に入居等 | 贈与税や譲渡税 |
6.合意解除 | 配偶者が施設に入居等 | 贈与税や譲渡税 |
この場合の譲渡税は、所得税の総合課税となります。

配偶者の判断能力が低下して、一人暮らしができなくなったとき
施設に入るなどの理由で配偶者が退去し空き家となった建物の売却
負担付所有者が、空き家となった自宅建物を売却したいと思っても、配偶者居住権がついたままでは実質買い手はつきません。
5.の配偶者の権利放棄か、6.の合意解除を行って配偶者居住権は消滅させなければならないのです。
このときに、配偶者の判断能力が低下しているか・いないかは、重要なポイントになってきます。

判断能力が低下した状態で結ばれた契約は法的に無効となるので、その場合の配偶者は5.や6.の法律行為に関する当事者になれません。
もし、判断能力の低下がみられた場合は、法定後見等開始を申立てて、後見人等に5.の放棄や6.の合意解除の手続きをゆだねることになります。
一度後見人等がついてしまうと、(本人-ここでは配偶者-の判断能力が回復した場合を除き)本人が亡くなるまで法定後見制度の利用は継続します。

仮に、配偶者居住権ではなく所有権を持っていた場合でも
では、配偶者が所有権を持っていたらこのような問題がないのかといえばそうでもありません。
建物を売却するとなれば、配偶者が売買契約の当事者になれるか否かに関わるため、判断能力が低下しているか・いないかは重要なポイントとなります。