商号を登記できても、その商号を商品名として使えないことがある

観葉植物が多いコワーキングスペースの窓際のテーブルで事務をする人々

不正の目的をもって商号等を使用することは禁止されている

会社法

会社法第8条第1項では、不正目的で他の会社と誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはならず、それに違反する名称または商号の使用により営業上の利益を侵害されたり、そのおそれがある会社は、侵害の停止や予防を請求できるとしています。
また、その規定に反して誤認されるおそれのある名称または商号を使用した者は会社法第978条第3号により、100万円以下の過料に処せられると規定しています。

不正競争防止法

不正競争防止法第2条第1項では、商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標票、商品の容器もしくは包装その他の商品または営業を表示するもの)として需要者の間に広く認識されているものと同一もしくは類似の商品等表示を使用等する行為のことを「不正競争」と定義しています。

民法なども

商号の利用による利益の侵害があった場合は、会社法、不正競争防止法、民法等の規定によって司法による救済を求めることにより解決が図られます。

商標権について

商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
特許庁に出願して審査を受け登録査定が送付されたら、登録料を納付して商標登録証を受領します。

すでに商標登録がされている他社等の商品などと同一や類似の名称は、商号として登記はできたとしても営業上は商号(会社名)とは別のブランド名称を使わなくては、商標権の侵害となります。
商品名やサービスに商号と同じ名称(会社名)をつけられないということです。
商標法第78条と第78条の2は、商標権の侵害があった場合についての罰則が定められています。

つまり、他社等が登録している商標と同じ商号で商業登記ができることはありますが(実務上、商業登記法において明確な制限がない)、不正競争防止法や商標法等の観点からは問題が生じる可能性があるということです。

自社の商号を守るために

商号を登記する前に、他社の商号や他社等の商標について調べておき、トラブルを防止する必要があります。

他社の商号や、登録されている商標を調べる方法

国税庁法人番号公表サイトで商号を調べる

法人番号の指定を受けた法人等の基本3情報を無料で検索することができます。基本3情報とは、1.商号又は名称、2.本店又は主たる事務所の所在地、3.法人番号のことです。

法務省のオンライン登記情報検索サービスで商号を調べる

法務省の登記・供託オンライン申請システムのオンライン登記情報検索サービスにログインして調べられます。閲覧だけなら無料です。
登記・供託オンライン申請システムに申請者情報を登録し、「申請者ID」と「パスワード」を取得する必要があります。登録は無料です。

法務局で商号を調べる

会社の本店所在地を管轄する法務局の専用端末で調べる

兵庫県内に本店所在場所がある会社を管轄する法務局は、神戸市中央区に所在する「神戸地方法務局 本局」です。
ここにある端末を利用して法務省の登記・供託オンライン申請システムのオンライン登記情報検索サービスにおいてログインなしで調べられます。閲覧だけなら無料です。

実際に法務局で登記事項証明書を取ってみる

手数料がかかりますが、つけたい商号が決定しているならその商号と本店所在場所で「商業登記事項証明書」を取ってみる方法があります。もしも取得できればその本店所在場所ですでに他社が商号を登記しているので、その本店所在場所では予定していた商号は登記できません。

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で商標を調べる

特許庁の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を使うと、商標を無料で閲覧することができます。

自社の商号を商標登録する

自社の商号を商標登録しておけば、類似または同一の商標を他社等に使用されなくてすみます。
営業をしていくうちに自社の商号が有名になった場合などは、商標登録をすると会社のブランド名称としての商号を商標として保護できますし、また商号としても他社に登記されづらくなります。

※商標登録出願は司法書士業務ではありません。