相続登記義務の履行期限を守るには、共同相続登記か相続人申告登記
共同相続登記(法定相続分での相続登記)は、現在も令和6年4月1日以降も申請可能
現行法(令和5年10月現在)でも令和6年4月1日以降であっても、遺産分割協議なしで法定相続分による相続登記ができます。これを共同相続登記といいます。
被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍・除籍謄本等を収集し、登録免許税を支払って相続登記を行います。
共同相続登記(法定相続分での相続登記)は、相続人全員からでも、自分ひとりでも、申請できる
法定相続分での相続登記は、相続人誰かひとりの申請で、他相続人全員分の持分まで相続登記申請することができます。他の相続人の承諾を得る必要はありません。
しかしこの方法だと、登記申請した人以外の相続人に、登記識別情報の通知がされません。
そして、他の相続人にとっては「自分の知らない間に不動産の所有権を登記されている」という状態になってしまいます。
(実際は、不動産の権利は保護されるし、登記申請義務も履行できるのですけれど)
相続人どうしの関係性にもよりますが、自分ひとりの相続登記義務の履行のためであれば、自分の分だけ相続人申告登記をするほうが、無用のトラブルは避けやすいかも知れません。
「共同相続登記を相続人ひとりで申請」は、あまりおすすめしません
同じ法定相続分で相続登記するのなら、相続人全員が協力して相続登記申請したほうがいいと思います。
共同相続登記の後に、所有権更生登記で持分を変更できる
共同相続登記の後、遺産分割協議を行って持分の変更があれば、「遺産分割」により所有権更正登記を行います。(令和5年3月28日通達、法務省民二第538号)。所有権更正登記の申請者は権利を取得する人のみ(単独申請)です。所有権更生登記は所有権移転登記と比べると登録免許税も少額で済みます。
令和6年4月1日以降は相続人申告登記制度を利用できる
・遺言書がなく遺産分割協議をしているがまとまらない
遺産分割協議が成立しなくて申告義務の期限に間に合いそうにないときには、共同相続登記か相続人申告登記を選ばなければなりません。
先ほども少し触れましたが、相続登記義務の履行のためだけに、共同相続登記と相続人申告登記のどちらかを選ぶとしたら、相続人申告登記のほうがベターかとは思います。
相続人申告登記は、持分が登記されない報告的登記なので、その点留意する必要があります。
遺言書や遺産分割協議による相続登記申請
・遺言書通りの相続
・遺言書はあるが相続人全員の意思でその内容とは違う遺産分割協議が成立
・遺言書はないが遺産分割協議は成立
このような場合は、「一般的な・ごく普通の」相続登記申請(相続が原因の所有権移転登記)が可能であり、相続登記申請義務についても3年の期限内であれば履行できます。