遺言書による、または遺産分割協議による相続登記申請をお勧めします―相続人申告登記のデメリット

相続の看板を持って、家と車の模型の横に立つかわいいおじいちゃんとおばあちゃんの人形

相続登記申請義務を履行することだけを考えたなら、コストや手間のかからなさの観点から相続人申告登記や共同相続登記申請を選択することもありえます。

相続人申告登記とは

相続登記申請義務履行期間内(3年以内)に遺産分割協議が成立しない場合、当該期間内に、自らが相続人であることがわかる戸籍謄本等を添付して、相続が開始した旨と自らが相続人である旨を登記官へ申出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなします。

他の相続人の分も含めた代理申請も可能です。

その後遺産分割協議が成立した場合、成立の日から3年以内に所有権移転登記の申請(登録免許税は要する)をしなければなりません。

正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられます。

相続人申告登記のメリット

1.遺産分割協議成立を待つ必要がない
2.登録免許税が不要
3.相続登記の申請義務を履行したものとみなされ、過料の支払い義務を免れる

相続人申告登記のデメリット

1.不動産登記法で守られている、不動産の所有権名義人としての権利を行使することができない
2.(正式な相続登記申請でもないのに)戸籍謄本等を揃え法務局で手続きする手間がかかる
3.固定資産税の請求が来る可能性がある
4.不動産登記簿に氏名・住所が記載される

3.の、固定資産税の請求の件ですが、市町村など自治体は相続人を調査する権限があるため、一般的には相続登記されていなくても(名義変更されていなくても)、相続人の誰か一人に固定資産税の請求は来ます。

4.の、不動産登記簿に氏名・住所が記載される件ですが、不動産登記簿を見た不動産業者などから営業をかけられるなどが考えられます。ただこれは、通常の相続登記でも同じです。

不動産登記簿に氏名や住所が記載されること自体は、通常の相続や売買などによる所有権名義変更でも同じです。もとより名義人などを公示するために不動産登記はあります。

相続登記申請と相続人申告登記を比較して

相続人申告登記は本来の所有権名義人が持つ権利を行使できないことが、デメリットのひとつです。

報告的登記としての相続人申告登記

相続人申告登記は、その不動産に関する連絡先をお知らせするようなものなので、「その不動産に利害関係がある国・地方公共団体やその他第三者」にとっては有益な制度だと思います。

例えば、道路をつくるためにその土地を収用しなければならない場合、収用者は申告登記された名義人に次々と連絡を取っていくと思います。
反対に申告登記された名義人は、自らは連絡先としての役割は果たせるのですが、その土地に対して正式な所有権の登記をしていないため、その土地をなんら活用することはできません。

相続人申告登記より相続登記申請を

相続人申告登記はあくまで緊急避難的な制度だと思います。
相続財産に不動産があることが判明した場合は、相続人申告登記がゴールなのではなく、第一選択肢として(共同相続登記申請よりも)遺言書による、または遺産分割協議の成立による相続登記申請を目指すことをお勧めします。

法務省は現在、共同相続登記や相続人申告登記後、遺産分割協議が成立しなければ、それ以上の登記申請は義務づけないとしていますが、今後変更になる可能性もあります。
また、共同相続登記や相続人申告登記の状態で次の相続が起これば、その度に相続人の数が増え権利関係がさらに複雑になって、正式な相続登記へのハードルはどんどん高くなります。