法務局による自筆証書遺言書保管制度

法務局への道しるべ

法務省民事局による自筆証書遺言書申請ガイドブックには、「手軽で自由度が高いという自筆証書遺言のメリットはそのままで、遺言書の紛失や改ざん、遺言書が相続人に発見されないなどの自筆証書遺言のデメリットを解消する。それが、法務局の自筆証書遺言書保管制度です。」となっています。

公正証書遺言作成ほどの大がかりなことはしたくないけれど、遺言書の内容は遺族にきちんと伝えたい、というかたには選択しうる方法でしょう。

自筆証書遺言保管制度を利用する手順

所定の様式に作成された遺言書申請書添付書類と、写真付き身分証明書を持ち、事前に予約を取って法務局へ出向き、手続きをして保管証を受け取る、という流れになっています。

遺言書の保管の申請は、次の3つのいずれかを管轄する法務局であればどこででも可能です。

  1. 遺言者の住所地
  2. 遺言者の本籍地
  3. 遺言者が所有する不動産の所在地

保管申請手数料は1件につき3,900円で、遺言書の閲覧や保管事実証明書交付などについての手数料は800円から1,700円となっています。

証人は不要、遺言者死亡時における家庭裁判所での検認も不要となります。

自筆証書遺言保管制度を利用するうえでの注意点

法務局で書類を提出する段階で、形式的に不備がないかのチェックがあります。

しかし遺言書の内容に関する相談は一切できません。また、用紙サイズや余白に決まりがあったり、財産目録を付ける場合や遺言内容に法律的にわからないことがあった場合など、遺言書や申請書の作成が少し複雑に感じるかたもいると思います。

自筆証書遺言の作成自体は気軽に行えることが最大の長所です。しかし、法律の専門家が関わることなく作成された遺言書が法務局に保管された後、遺言者が亡くなり開封してみたら、法律的に有効にならない内容があった、遺族が思うに、もし遺言者がそれを知っていたら代わりに別の内容を書いていたのではないか…というようなことが、ないとは言えません。

専門職に相談してみる

当該制度を利用する場合でも、事前に司法書士など法律の専門家に相談し、質問に答えてもらったり、書類を作成してもらったりすれば、この制度の有益性をさらに引き出すことができるでしょう。