家族信託の登場人物ー委託者・受託者・受益者

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信託の基礎

1.信託の定義

自分の大切な財産を信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って、大切な人や自分のために運用・管理してもらうことをいいます。

2.信託の要素

委託者 財産を預ける人(自分)

受託者 財産を託されて管理・運用する人(信託銀行や親族など)

受益者 財産から生じる利益を得る人(大切な人や自分)

信託財産 委託者から受託者へ信託された財産のこと

信託目的 信託した財産を、誰のためにどのような目的でどのように運用・管理するかということ

信託の当事者の組み合わせによる分類

1.他益信託

委託者と受益者が別の人物

2.自益信託

委託者と受益者が同一人物

3.自己信託(宣言による信託)

委託者と受託者が同一人物

4.受託者と受益者の兼任

信託法第163条2号によれば、信託は受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したときは終了するとされています。
固有財産とは、受託者に属する財産であって、信託財産に属する財産でない一切の財産のことです。
(受託者が、受益権の全部を信託財産でない受託者自身の財産として有する状態が1年間続いたら、ということです。)

受託者と受益者の兼任は1年の間だけ許されています。
当初の受益者が死亡し、受託者が受益権を引き継ぐときに起こることです。

この1年ルールを回避するためには

a.引き継ぐ受益者を複数にする
b.第2受託者を決めておく
c.受託者自身に次の受託者を選べるようにしておく
d.受託者を法人にしておく

などが考えられます。

それぞれの例

他益信託

委託者が自分、受託者が子、受益者が妻

信託財産の名義人は子。財産権の移動があるので、贈与税が発生する可能性があります。

自益信託

委託者が自分、受託者が子、受益者が自分

信託財産の名義人は子。贈与税は発生しないが相続税が発生する可能性があります。
一般的な家族信託はこの類型になります。

自己信託

委託者が自分受託者が自分、受益者が子

子に障がいがあった場合などに選択されます。信託財産の名義人は自分となりその財産の管理は自分が行うが、発生する経済的利益は子に持たせる信託契約の形です。
自分が受託者として働けなくなった場合を考えて、第2受託者を決めておくなどの必要があるときがあります。
財産権の移動があるため、受益者である子に対して贈与税が発生する可能性があります。

受託者と受益者の兼任

・委託者が自分、受託者が子、第1受益者が自分、第2受益者が妻、第3受益者が子

信託財産の名義人は子。第1受益者である自分の死後は妻に信託受益権が引き継がれます。信託締結から30年経過した時に妻が受益者であれば、第3受益者まで信託受益権は引き継がれます。
この時、子は受託者と受益者を兼任することになるため、1年以内に受託者を変更しなければなりません。
また、委託者死亡時に信託財産は相続税の課税対象となりますが、第2受益者が妻であれば相続税の配偶者控除を受けられます。