家族信託と任意後見制度・法定後見制度の関係

山を見下ろす岩の上に座っている家族5人

任意後見制度と法定後見制度をまとめて、成年後見制度といいます。

任意後見制度は、判断能力が低下する前に任意後見契約を公正証書で結んでおき、判断能力が低下した時に家庭裁判所が関与して発効する制度です。
法定後見制度は判断能力が低下した後に、家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。

委託者が、相続人の立場になってしまった

家族信託契約を結んでいても、成年後見制度を利用する可能性が生じるときがあります。それは、家族信託契約における委託者の判断能力が低下している状態で法定相続人になってしまった場合です。

家族信託の委託者が法定相続人になり、遺言書も残されていない

家族信託の委託者の、親・配偶者・子がいないきょうだいなどが亡くなり、遺産分割をしなければならないときがあります。

相続人の判断能力が低下していると、遺産分割協議が終了しません。
なので、相続人について任意後見人や成年後見人等が必要になります。
こういった相続人に家族信託の委託者が該当する場合は、成年後見制度と併用しなければなりません。

任意後見か法定後見か

家族信託契約と併用して任意後見契約を結んでいて、発効がまだならば発効させます。

任意後見契約を結んでいなければ、法定後見制度を利用して成年後見人等をつけます。

家族信託は成年後見制度の使いづらさをやわらげる

成年後見制度の利用を回避するために家族信託を契約しようと思ったのに、なんだやっぱり成年後見人等はつくのか・・・
・・・それでもやはり、家族信託は検討する価値があります。

遺産分割時に成年後見制度を利用するのは

成年後見人等がつくのは、判断能力が十分でない人の利益を守るためです。
一方で、遺産分割が済んだら元の状態に戻りたいところですが、そもそも一旦成年後見人等がついてしまうと、本人の判断能力が回復しない限り、外れることはありません。

成年後見制度を利用することで感じる負担感

成年後見制度を利用するとき感じることがある負担感とは、このようなものです。

  1. 事務的負担 成年後見人等は、報告書を作成し定期的に家庭裁判所へ報告する
  2. 経済的負担 専門職後見人等が選任されている場合、本人の財産から報酬支払いが発生する
  3. 精神的負担 家庭裁判所の監督を受けながら保守的に本人の財産を管理する

負担感を減少するためには

任意後見制度を単体で利用

親族が任意後見人になった場合、2.の経済的負担はやや軽くなりますが(発効時に専門職が任意後見監督人に選任されるため、報酬支払いが発生する)1.事務的負担 3.精神的負担は、特に変わりません。

法定後見制度のなかの、後見制度支援信託を利用

後見制度支援信託を利用して親族が成年後見人等になった場合、2.の経済的負担は軽くなりますが(親族後見人等が自身に報酬付与をするか否かは選べる)1.事務的負担 3.精神的負担は、特に変わりません。

家族信託契約を単体で締結する、または任意後見契約も併用しておく

家族信託を成年後見制度と併用すれば、1.2.3.各項目とも負担感を減少できると考えられます。

家族信託契約において、委託者の財産の中で気になるものを信託財産にできていれば、成年後見人等が管理する財産からそれを除外できます。成年後見人等が管理する財産を減らすのです。

  1. 事務的負担の減少 家庭裁判所へ報告する財産の種類や額が減らせる
  2. 経済的負担の減少 本人の財産の額が減らせるので、専門職後見人等への報酬付与があってもその額は減る
  3. 精神的負担の減少 家庭裁判所の監督下で管理する財産が減らせる


家族信託契約における信託財産については家庭裁判所に対する事務報告の必要はありません。また、信託財産についての使途は家族信託契約に基づきますので、家庭裁判所の関与はありません。
ですので家族信託を利用すれば、投資をする余地なども生まれます。

家族信託や任意後見は判断能力が低下する前でなければ契約ができません。(法定後見は判断能力が低下してから、むしろ低下していなければ申立てできない)もしもご自身やご家族の将来に少々でも気がかりがありましたら、家族信託以外の方法も含めて、ご相談だけでも承ります。