非公開会社で非大会社である株式会社の機関設計

木製の机の上で書籍とラップトップを広げてノートにペンで記入する

株式会社の機関と機関設計とは

会社の意思決定や実務の執行には、必ず人(自然人)が関わって行わなくてはなりません。
これらを行う人やその集団のことを会社法では「機関」と呼びます。
株式会社で設置する機関には10種類があります。(会社法第2編第4章)

1.株主総会
2.取締役
3.取締役会
4.会計参与
5.監査役
6.監査役会
7.会計監査人
8.監査等委員会
9.指名委員会等
10.執行役

これらの機関を、自らの会社に相応しく、しかも会社法に沿って組み立てていくことを機関設計といいます。

株式会社を分類する

会社法で株式会社を分類する方法として、「公開会社か非公開会社か」と、「大会社か非大会社か」というものがあります。

公開会社か非公開会社か

公開会社とは、定款に譲渡制限のない株式を発行する定めがある会社のことです。実際に発行しているかは無関係です。
定款の定めに、1株でも「譲渡自由な株式」があれば公開会社です。
全株式に譲渡制限があるときに限り、公開会社でなくなります。
また、証券取引市場に株式を上場している会社を上場会社といいます。一般に上場会社のことを公開会社と呼ぶことがありますが、会社法上の公開会社とは意味が異なります。

大会社か非大会社か

大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること、または最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であることと定義されます。(会社法第2条第6項)

株式会社の機関設計をわかりやすく

株式会社の機関設計を理解するには

a.全ての株式会社に設置が義務とされる機関
b.公開会社か非公開会社かにより設置される機関
c.大会社か非大会社かにより設置される機関
d.特定の機関を設置した場合に(セットで)設置しなければならない機関
e.特定の機関を設置した場合に設置してはいけない機関

といった観点から整理してゆくとよいと思います。

全ての株式会社に設置が義務付けられる機関

全ての株式会社に設置が義務付けられる機関は、株主総会と取締役です。(会社法第326条第1項)

株主総会

株主総会は、取締役会を設置していない会社では株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する全ての事項について決議できる機関です。
取締役会を設置している会社では、一部の事項を決議することができます。

取締役

取締役とは、原則として株式会社の経営にあたる機関とされています。人数は1人でも2人以上でもよいとされます。
取締役会を設置していない会社では、会社を代表します。
取締役が2人以上で、取締役を設置していない会社では、定款、定款規定に基づく取締役の互選、株主総会決議の3つの方法で代表取締役を選定できます。

非公開会社で非大会社の最小の機関設計は株主総会と取締役1人

全ての株式会社は、株主総会と取締役(1人または2人以上)を設置しなくてはなりません。
設立する株式会社が非公開会社で非大会社であれば、株主総会と取締役1人という最小の設計も選択することができます。

非公開会社で非大会社である株式会社は、株主総会と取締役を置くこと以外は機関設計に関する縛りはないということもあり、株主総会と取締役に(取締役会設置なしで)監査役を置くことで設計をまとめることは多いです。
これは旧商法が、株主総会・取締役3人・監査役1人の設置を義務付けていたことの名残りですが、今後はミニマムに機関設計をした会社は増加するものと思われます。

中小企業においては、会計監査人・監査役会・委員会を置くことはあまりありません。
なお、取締役会設置には取締役3人以上が必要であり、監査役会を設置するにも監査役3人以上が必要です。
また、取締役会を設置すると代表取締役の選定が必要になります。(会社法第362条第3項)

会計参与とは

会計参与とは、取締役などど共同で貸借対照表や損益計算書などの計算書類を作成する社内の役員です。定款で定め、株主総会で選定すればどんな会社でも置けます。
役員として社内に会計参与を置くより、社外で会計事務所等と顧問契約を結ぶ会社が多いため、実際にはあまり設置されていません。