相続や家族のことが不安・・・

自宅の庭でガーデニングをする幼い孫と祖父母

遺産の行方や遺された家族に関する不安に備えます。

1.遺言書を作成する

遺産相続に対する自分の希望を表明しておきます。公正証書遺言、自筆証書遺言の法務局保管などの方法があります。
ただ、相続人全員が同意すれば、遺言書と違う遺産分割ができてしまいます。

公正証書遺言

法務局による自筆証書遺言保管制度

2.家族信託で「遺言による信託」を行う

遺言書に家族信託契約を記載します(信託法第3条2項による遺言信託)。それにより自分の死後の財産管理について指定できます。
相手方の意思とは無関係に作成できる遺言書と違い、受託者の承諾を得る必要はありますが、希望通りになる確率が上がります。

信託とは

3.生前に、自らの財産を推定相続人等に与える

他の推定相続人に比べて、優遇したい人がいたとします。
「節税効果にこだわらず、財産をあの人に早期・確実に移したい」という希望をかなえる方法です。

a.生前贈与(暦年贈与)する

生前贈与とは自らが死亡する前に財産を推定相続人等に分け与えることをいいます。
また、暦年贈与とは暦年(1月1日から12月31日まで)の贈与税の基礎控除額を110万円までとする制度を利用した贈与方法です。

b.相続時精算課税制度を利用する

60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子や孫へ、財産を贈与したときに選択できる制度です。
特別控除2,500万円まで(2024年1月から2,500円に加えて年間110万円の基礎控除が認められる)贈与税を納めずに贈与を受けることができ、贈与者の死後に贈与金額と遺産の金額との合計額から相続税額を計算して相続税として納税します。

c.婚姻期間20年以上の夫婦間贈与の特例を利用する

結婚から20年を経過している夫婦であれば、自宅の権利を2,000万円分、または自宅を購入する資金として2,000万円を贈与しても贈与税が課されない、という制度です。
2019年、贈与する財産が建物・敷地であった場合(自宅購入資金は除かれます)において「夫婦間贈与の特別受益の持ち戻し免除を推定する旨」の規定が新設されました。

遺産相続時に配偶者の特別受益が持ち戻されないと、相続時に法定分割になったとしても結果的に多く配偶者へ持たせることができます。
遺される配偶者の住む場所を確保しやすくすることを第一義として行うとスムーズに運ぶと思います。

参考:相続税等の節税を優先するなら税理士など税の専門家へ相談することをお勧めします

暦年贈与・・・非課税枠(110万円以下)か、少々超える範囲で毎年贈与する方法ですが、2024年1月から持ち戻し期間が3年から7年に変更されたため、有利さは減った印象です。

相続時精算課税制度・・・一度この制度を選択すると暦年贈与に戻れない・「小規模宅地等の特例」は受けられないなどの注意点があり、節税効果に関しては個々の事例により異なります。

婚姻期間20年以上の夫婦間贈与の特例・・・自宅の権利の場合において、「夫婦間贈与の特例(2,000万円)」で贈与税が0円になる場合と、「配偶者の税額軽減の特例(1.6億円など)」や「小規模宅地等の特例(評価額が8割引)」を適用し相続税が0円になる場合を比較したとき、不動産取得税や登録免許税も考慮する(相続では不動産取得税は非課税で、登録免許税は0.4%)と、「夫婦間贈与の特例」は有利となりません。

4.配偶者居住権を設定できるよう、死因贈与契約書や遺言書を公正証書で作成しておく

自分の死後も、変わらず配偶者が自宅に住み続けられるよう配慮した配偶者居住権の制度ですが、デメリットも多いので利用については注意が必要です。

配偶者居住権と敷地利用権